前回「マミートラック」についてお話ししてくださったちゃみさん。
今日は、ちゃみさんが経験されたマミートラックの詳細について、さらに具体的にお話ししてもらいました。
ちゃみ:こんにちは。ちゃみと申します。アフリカ人の夫と国際結婚し、2人のやんちゃな男の子のママで、都内ととある企業で時短勤務ワーママしてます。ニコこんにちは。ワーママスタイル編集長のニコです。私は子ど[…]
今回、ちゃみさんには当時の気持ちを正直に語っていただいています。
私もお話を聞いて胸が痛くなりましたが、ちゃみさんの前向きな考え方に勇気をもらいました。
今回のちゃみさんの言葉には、同じ体験をされている女性へのヒントがたくさんつまっているのではないでしょうか。
ちゃみ:「マミートラック」とは、出産を終えて復職したワーキングマザーが、責任ある仕事を任されなかったり、不本意な異動を経験したり、と出世コースから離脱し「ママ用のコース」へ乗せせられてしまう現象です。
私は一人目の育休を終えて復職した際、マミートラックを経験しました。
今はマミートラックを乗り越え、というか割り切ることで、ストレスなく仕事ができていると思いますが、渦中にいたときには毎日仕事に行くのが憂鬱でした。
そんな私のマミートラックエピソードをご紹介したいと思います。
出産まではバリキャリ女性社員だった
私は新卒でメーカーの総合職として入社し、出産前まではある程度バリバリ仕事をしてきました。
目標は海外駐在。上層部にも「将来的には海外駐在候補」なんてほのめかしてもらえることもあり、調子に乗っていたところもあります。
「子どもができてもバリバリ働きたい。」
「何なら夫には専業主夫になってもらってもいい。」
「家族を私の海外駐在に帯同させる。」
そう考えていたし、周りにも公言していたバリキャリ女子。
外出、出張、残業、飲み会、ガッツリこなしていました。
しかし実際に子どもが生まれ、その考えはガラっと変わったんですね。
あんなに仕事したがりで、キャリアを追い求めていた私が、
「保育園に預けないで、ずっと子どもといられればいいのに…」
「復職なんかせずに、育休がずっと続けばいいのに…」
と思うようになりました。
でも復職することは我が家の経済的にも必須なので、そこは私なりに切り替えて
「時短勤務はするけど、どこまでバリバリ働けるかな」
「復職したらどんな仕事が待ってるかな」
と意識的に気持ちを高ぶらせて、復職しました。
待っていたのは仕事を任されないマミートラックの現実
しかし、復職後に待っていたのは、総合職をサポートするアシスタントに近い業務内容でした。
かつてはサポートされていた側に立っていた私が、逆にサポートする側に回ることになったんです。
また、復職時は休職前の所属先に戻ることが前提という会社のルールがありますが、私は復職と同時に別のグループへ異動になりました。
私の休職中に別の社員が私の穴を埋めてくれていたので、私が帰る場所がなかったんですね。
人手が足りていないグループにサポートして入る形でした。
その後も
- 責任のある仕事は回ってこない
- 打ち合わせには呼ばれない
- 外回りや出張もなくなった
など、産前とは仕事の内容が一変しました。
かつて仕事を教えていた後輩たちの仕事のおこぼれをもらい、後輩が仕切る仕事のサポートをする日々。
同期は全員、私が育休中に昇格していましたが、私には復職後も上司が色々と理由を付けて昇格のチャンスはやってきませんでした。
出産する前までずっと同じようにキャリアを積んできた男性同期から
「マミートラックってやつだねw」
と言われました。
悔しかったけど、本当にそうなんですよね。
そしてその時、「これがいわゆるマミートラックか。」と自分が当事者になっていることに気がつきました。
ちなみにその男性同期、私と同じ時期に子どもが生まれています。
同期は社内結婚なので、奥様も同じ会社の総合職社員です。
うちの会社では、男性社員の育休取得を推奨してはいますが、そんなの結局カタチだけで、育休を取得する男性社員はほとんどいません。
私の同期の場合も、奥様のみが1年弱の産休育休を取得し、時短勤務で復職されています。
同期は保育園の送り迎えの一部を担ってはいるようですが、勤務時間は変わらず。
同じ会社で働いている夫婦同士でも、会社から長期で離脱するのも、時短勤務を取って働き方を変えるのも女性になってしまうんだな、と少し悲しくなりました。
男性はいいよね!とちょっと卑屈になってしまったことも(苦笑)。
同じ年齢の子どもを持つ、同じ期間、同じ会社に勤める人間なのに、男性と女性でこうやって差が出てきてしまうんです。
女性だけママ用のキャリアコースに投げ込まれてしまうんですね。
本当に悔しい、でも何もできず歯がゆい思いでした。
プロジェクトから外され、出世コースからの離脱を決意
そんな中、極めつけとなる出来事がありました。
子どもを持つ前だったら絶対に、確実に、関わっていたであろう、メンバーとして真っ先に名前が挙がるひとりであっただろうプロジェクトに呼ばれなかったんです。
とは言っても、「ちゃみさんはこのプロジェクトに入れない」と断言されたわけではなく、私の完全に知らないところでプロジェクトがキックオフされていて、知らない間に打ち合わせが行われていたようです。
しばらく経ってからプロジェクトが進行していることを知り、自分に声がかかっていない事実にひどく落ち込みました。
ただ、上司や同僚も何の悪気もなかったと思います。
このプロジェクトに関われば海外出張が必須になるし、時差のある欧米とのSkype会議(大体日本時間の夜遅くからスタート)も必要になってくるので、時短で働くワーママのちゃみさんは無理だろうという暗黙の了解みたいなものがあったのでしょう。
でも、わがままを言わせてもらえば、「この仕事関われそう?」って聞いてほしかった。
海外出張が必須だったとしても、実家に頼み込んで1週間くらいなら行けるかもしれない。
週1回程度の定時後のSkype会議なら、夫に保育園のお迎えを頼んで参加できるかもしれない。
時短勤務で業務が終わらないのであれば、このプロジェクトの間だけでも、PCを持ち帰って夜子どもが寝てから仕事ができたかもしれない。
必要とされているなら、私だって頑張りたい!
そんな思いはありました。
でもそのような相談などはなく…。上司や同僚としては、時短勤務のワーママをプロジェクトメンバーに入れるという考えすらなかったかもしれませんね。
私もそんなにやりたい仕事だったら、プロジェクトが既に進んでいたとしても「そのプロジェクト入りたいです!」と言えばよかったのかもしれません。
でも「やっぱり私は必要とされていないんだ」とショックを受け、完全にあきらめてしまった私。
「なにくそ!」と頑張る代わりに、「仕事もうちょっと頑張ろうかと思ってたけど、やっぱり2人目作ろう…」と決め、すぐに妊娠、また産休に入るのでした。
でも、そのバランスを、会社が主導して決めたことに少し問題があるように感じました。
もしもバランスの選択権がちゃみさんにあったら、もっと別の働き方があったかもしれないですね…。
バリキャリ路線から降りて吹っ切ったら楽になった
そして、この経験が極めつけとなり、会社でキャリアを積むことは私の優先順位の圏外へ急降下しました。
今まで頑張ってしがみついてきた「出世コース」からは外れようと思ったんですね。
2人目の子どもは7月生まれとなったので、0歳で保育園に預けて翌年の4月復職をするのがメジャーな流れだと思います。
でも私はどうせ、いずれ保育園には入るんだから、いられるだけ一緒にいようと、1歳入園まで育休を延長し、産休育休合わせて約2年の休職期間を取りました。
さらに、2回目の復職後は1回目の復職時よりも短い勤務時間にしています。
「最優先は家族」というぶれない気持ちがあったので、物理的にも精神的も余裕のない生活はしたくなくて、より短い勤務時間を選びました。
そんなことをすれば、よりキャリア路線からは遠ざかることは目に見えていましたが、それをあえて選びました。
2度目の復職となった現在も、やはり前回と同じようなアシスタントに近い業務ですし、責任ある仕事は相変わらず回ってきません。
出産前に経験していた「仕事の中心になる」という経験をすることは、もうありません。
でも、この会社でキャリを積むことに対する思い入れももうないし、会社での仕事のほかに、一生懸命になれること、楽しめることがあるので、もう以前のようなモヤモヤはないですね。
平日はバタバタした日々を送ってはいますが、時短勤務をほぼめいっぱい使っていることもあり、家族と団らんする時間もあるし、子どもたちと遊ぶ時間もあるし、子どもたちと布団に入って寝落ちできる余裕もあります。
今の働き方にして精神的にもぐっと楽になりました。
マミートラックへの対応は人それぞれだと思いますが、私の場合は、会社のキャリア路線から思い切って外れることで吹っ切ることができたと感じています。
とても貴重な体験談をお話しいただき、ありがとうございました。
ちゃみさんはバリキャリ路線から降りたことに後悔はありますか?
ちゃみ:家族との時間を優先したことや、キャリアの方向転換を検討したことに関しては、後悔していません。
ただ、社内の別部署で、復職しても職場に認められて、仕事もたくさん振られて、頑張っている先輩や後輩の女性総合職ワーキングマザーたちが出てきて、ちょっとだけうらやましく感じることは事実です。
ワーママになっても、あんな風にキラキラ働けるんだなぁって。
でも、彼女たちは私には乗り越えられなかった葛藤を、歯を食いしばって乗り越えたのかもしれないし、我が家が得られないようなサポート(実家の手厚いヘルプなど)があるのかもしれない。
ワーママと言っても、家庭の状況や仕事への思いは十人十色ですからね。一面だけ見て判断することはできません。
だから、それぞれのワーキングマザーが、「自分が」心地よい働き方を選ぶのがベストだなと。
それが私の場合は、会社でのキャリア路線にしがみつくことではなく、家族との時間を優先しながら、別のキャリアを模索することでした。
きっと皆何かを犠牲にして、心の摩擦を感じながら頑張ってる。
それに対して外部から理解のない言葉をかけられることもあると思います。
ちゃみ:だからこそ、自分の中の軸をしっかりと持つことの大切さを痛感しました。
ちゃみさんの同僚の男性の言葉や、ミーティングに自然と呼ばない職場の雰囲気などで、ちゃみさんがどれくらい傷つくか…までは考えられないのかもしれません。
でもきっと同僚の方達は、ちゃみさんのことを思って行動している面も大きい。だからマミートラックに陥った女性は、誰を責めたら良いのかもわからず余計にモヤモヤしてしまいますよね。
次回の記事では、ちゃみさんにマミートラックの対処法について伺います。
うまく対処し、職場内で良い関係性が生まれたら素晴らしいことですね。